なぜスタートアップでは中間管理職が機能しなくなるのか?構造と現実から解説
多くのスタートアップが、ある段階で中間管理職の問題に直面します。経営者と現場の間に立つ役割を採用したのに、期待した働きが得られない。前職では成果を出していた人材が、自社では機能しない。あるいは、せっかく採用した管理職が短期間で離職してしまう——こうした現象は、業種や規模が異なる会社でも、似たタイミングで似た形で繰り返されます。
この問題はしばしば「あの人は合わなかった」「マネジメント能力が足りなかった」といった個人の評価に還元されがちです。しかし、違う人を採用しても同じ問題が再発するとなれば、それは個人の能力の問題ではなく、その人を機能させる環境の構造に問題があると考えるほうが整合的です。
本記事は、中間管理職を擁護するためのものでも、経営者を批判するためのものでもありません。焦点を当てたいのは、スタートアップという環境が、中間管理職という役割が機能するための構造的な前提を欠いているという事実です。そして、その前提が欠けたまま採用を進めると、誰がその役割に就いても同じ結果になりやすい——という現実的な観察を整理することです。
想定読者は、中間管理職の採用や活用に苦戦している経営者、スタートアップで管理職として働いている方、これから管理職への移行を検討している方、そして組織設計の問題を構造として考えたい方です。理想化されたマネジメント論ではなく、地方都市を含む現実の制約の中で何が起きているかを、冷静な視点から記述します。
なぜスタートアップでは中間管理職が難しいのか
スタートアップにおける中間管理職の難しさは、三つの構造的な要因で説明できます。これらは個別の課題ではなく、相互に絡み合いながら、管理職が機能しにくい環境を作り出します。
業務範囲が広すぎる
スタートアップでの中間管理職は、単に「メンバーを管理する人」ではありません。実務、採用、評価、教育、対外折衝、戦略立案、文化醸成、経営者との橋渡し——これらが一人の役割として束ねられがちです。業務の総量が大きいだけでなく、性質の異なる業務が並列で割り当てられるため、優先順位の判断にも常にコストがかかります。
大企業では、これらの業務はそれぞれ別の部門・別の役職に分担されているのが通常です。ところがスタートアップでは、人数が少ないため、本来であれば複数人で担うべき領域を一人の管理職が引き受けます。結果として、どの領域でも100%の質を出すことが難しく、「なぜ全部中途半端なのか」という評価につながりやすい構造があります。
役割が曖昧で評価が難しい
業務範囲が広いだけでなく、その範囲の境界も明確ではありません。誰がどこまで決めてよいのか、どの成果が誰の責任なのか、何を達成すれば「成果を出した」と評価されるのか——これらが組織の中で言語化されていないことが多く、管理職本人も経営者も、評価の物差しを共有できない状態が生じます。
評価の物差しがないと、フィードバックは感覚的になります。「なんとなく動きが鈍い」「もっとリーダーシップがほしい」「期待した成果が出ていない」——こうした抽象的な言葉が交わされ、双方の認識のズレが解消されないまま時間が経過します。やがて、お互いに不信感が蓄積し、関係が継続できなくなるという経路が典型的に見られます。
組織構造が未成熟である
中間管理職という役割は、本来、組織の構造の中で機能することを前提に設計されています。明文化された業務プロセス、評価制度、情報共有の経路、判断権限の規定——これらが整っているからこそ、中間管理職は「構造を運用する役割」として機能します。しかし、スタートアップではこれらの基盤がまだ整備されていない段階で管理職を必要とすることが多く、結果として管理職は「構造を運用する」のではなく「構造を作りながら運用する」二重の負担を背負います。基盤を作る作業は短期的には成果が見えにくく、評価に結びつきにくいため、努力が報われにくい構造もあります。
「それは自分の仕事ではない」が通用しない理由
スタートアップや中小企業の管理職と、大企業の管理職との間には、暗黙のうちに大きな違いがあります。最も顕著なのは、役割を超える行動への期待値の違いです。
小さな組織では役割を超えた動きが求められる
スタートアップでは、組織全体が小さく、業務間の隙間も多く存在します。誰の担当か明確に決まっていないタスクが日常的に発生し、それを拾える人がいなければ、事業全体の動きが止まります。この環境では、自分の役割の外側に踏み出して動ける人材が高く評価されます。
逆に、自分の業務範囲を明確に守ろうとし、「それは自分の仕事ではない」というスタンスを取る人材は、たとえ与えられた業務を完璧にこなしていたとしても、組織全体への貢献度が低いと評価されやすくなります。これは個人の好き嫌いの問題ではなく、小さな組織が機能するために必要な前提条件として組み込まれている特性です。
大企業との評価基準の違い
大企業では、職務範囲を明確に守ることがむしろ評価されやすい環境があります。職域を侵すことはガバナンス上の問題になり、決められた範囲内で高い成果を出すことが管理職としての職務遂行とされます。役割の明確化と専門性の深化が、組織が大きくなるほど重要になるからです。
この評価基準で長年働いてきた人材が、スタートアップに移ると、無意識のうちに大企業の前提を持ち込みます。「これは自分の管轄ではないので別の担当者に」「権限の範囲を確認してから対応する」「決められた業務に専念する」——こうした振る舞いは、大企業では適切な行動ですが、スタートアップでは「動きが遅い」「主体性がない」と評価されてしまうことがあります。
このギャップが摩擦を生む
経営者は、暗黙のうちに「自分と同じように、領域を越えて動いてくれる管理職」を求めます。一方、採用される側は、自分のキャリアの中で身につけた評価基準に基づいて、職務を全うしようとします。両者の前提が共有されないまま採用と運用が始まると、実務の細部で齟齬が積み重なり、相互の期待が裏切られたという感覚が双方に蓄積していきます。これは個人の性格や能力の問題ではなく、組織のステージごとに「望ましい振る舞い」の定義が違うという構造の問題です。この前提のズレを採用の段階で言語化できるかどうかが、後の摩擦を大きく左右します。
キャリアとしての難しさ
経営者側の視点だけでなく、管理職本人のキャリアの側から見たときの構造的な難しさも、無視できない要素です。中間管理職という役割は、スタートアップという環境では、長期的なキャリア形成という観点でも特有の困難を抱えています。
スタートアップを渡り歩くリスク
スタートアップで管理職を務めた経験は、別のスタートアップで再度評価されるとは限りません。各社のフェーズ、業種、組織文化が大きく異なるため、ある会社で機能した管理スタイルが別の会社では機能しない、ということが頻繁に起こります。
さらに、複数のスタートアップを短期間で渡り歩いた経歴は、転職市場では「定着力に欠ける」と解釈されることもあります。本人にとっては、各社で得た学びが多かったとしても、市場側がその経験を再現可能なキャリア資産として認識しないと、次の機会が広がらないという現実があります。
専門職でない場合の厳しさ
エンジニア、デザイナー、データサイエンティストなど、明確な専門職として通用するスキルを持っている場合、転職市場での評価は比較的安定します。技術的な能力は会社が変わっても再現性が高く、企業側も評価軸を持っています。
一方、純粋なマネジメント職や事業企画職、経営企画職などは、再現性のある評価軸を市場側が持ちにくいため、キャリア形成の不確実性が高まります。「マネジメント経験」という抽象的な記述では、次の会社でどんな成果を出せるかが伝わりにくく、年齢が上がるほど採用ハードルも上がる傾向があります。
年齢とポジションの問題
40代以降になると、転職市場における管理職ポジションの選択肢は急速に狭まります。特に、地方都市では大企業の管理職ポストの数が限られ、スタートアップでも経営者との年齢逆転を避けたい組織が多く、結果として「マッチする会社が見つからない」状態に陥りやすくなります。スタートアップで一度キャリアを始めた管理職が、その先のキャリアパスを描きにくいという現実は、本人だけでなく、採用する経営者側も理解しておく必要があります。長期的に「この会社で何年働けるか」「次のキャリアはどう描くか」を共有できないまま採用を進めると、双方の認識が後からずれ、関係が長続きしない原因になります。
経営者が見落としがちなポイント
プロダクトやマーケティングばかりに注力する
多くの起業家は、プロダクト開発やマーケティングを「事業の中核」として位置づけ、これらの領域には十分なリソースと思考を投入します。プロダクトの仕様、マーケティングの予算配分、KPI設計などには細かく関与し、外部のアドバイザーも積極的に活用します。
一方、組織設計やコアメンバーの採用に対しては、同じレベルの思考時間が投じられないことがしばしばあります。「人については、その時に考えればよい」「良い人がいれば採用する」という曖昧な前提のまま、事業フェーズだけが先行する状態が生まれます。
組織設計や人材の優先度が低い
組織設計は、短期的には事業数値に直結しません。役職を整理しても、評価制度を作っても、来月の売上が増えるわけではありません。だからこそ、目の前の数字を追う中で、組織設計は常に「後回しにしてよい領域」として扱われがちです。
しかし、組織設計が後回しになった結果、コアメンバーの採用も場当たり的になり、入社後の役割設計も曖昧なまま進みます。優先度の低さは、後から取り返すのが難しい領域です。組織が崩れ始めてから整備を始めるのと、最初から優先度を上げて取り組むのとでは、必要なエネルギーがまったく異なります。組織が拡大する局面での具体的な歪みについては「なぜ組織は急拡大すると壊れるのか?」でも整理しています。
コア人材の重要性の過小評価
経営の中核を担うコア人材——COO、VP of Engineering、ヘッドオブセールスなど——の採用は、プロダクトを作ることや資金調達と同じレベルの戦略的判断です。にもかかわらず、これらの採用は「採用代行」「リクルーター任せ」「知人の紹介」など、戦略的な検討が不足したまま進みやすい領域でもあります。コア人材の採用を、採用そのものとして扱うのではなく、事業の方向性を共有するパートナー選定として扱う発想が、結果的に管理職問題を構造の出発点で防ぐ最も有効な方法です。コア人材が機能していれば、その下の中間管理職にかかる負荷も大きく変わります。
なぜ理想通りにいかないのか(地方の現実)
ここまでの整理は理論的には正しい一方、現実の制約を踏まえないと机上の議論に終わります。特に地方都市での経営においては、理想的な人材の採用がそもそも構造的に難しいという現実があります。
人材の絶対数が少ない
地方都市では、スタートアップでの管理職経験を持つ人材の絶対数が、東京や大阪などの大都市に比べて圧倒的に少ない状況です。求人を出しても、応募してくる人材のプールが薄く、同じ条件で採用しようとしても候補者が見つからない、ということが頻繁に起こります。
この絶対数の少なさは、単に「待てば見つかる」性質の問題ではありません。人口構成、産業構造、過去のスタートアップエコシステムの蓄積など、地域全体の構造的な要因に根ざしているため、短期間で改善するものではありません。地方都市の採用の構造的な課題については「地方で採用が難しい理由とは?」でも整理しています。
報酬条件の制約
スタートアップが提示できる報酬には、現実的な上限があります。シードからシリーズAあたりのフェーズでは、東京の上場企業や大手ITが提示する年収水準と同じ条件は提示しにくく、ストックオプションを加味しても、確実な現金収入としての差は埋まりません。
この報酬の制約は、特に管理職層の採用において深刻です。専門職と違って、管理職は経験年数とともに期待年収が上がりやすく、家族構成や住宅ローンなどの生活基盤も加味した報酬期待を持っているケースが多いからです。スタートアップが提示できる金額と、候補者が必要とする金額のギャップが、現実的な障壁として機能します。
採用ネットワークの違い
大都市では、スタートアップ間の人材流動性が高く、知人の紹介、勉強会、コミュニティを通じた採用が活発です。情報の流通速度も速く、「あの会社が管理職を探している」という話が、関連する人材コミュニティに比較的早く届きます。一方、地方都市ではこうしたネットワークが薄く、採用情報が必要な層に届くまでに時間がかかります。情報の非対称性が大きいため、求人媒体への掲載や採用エージェントへの依頼だけでは届かない領域が広く、結果として「採用に時間がかかる」「条件が合う人材に出会えない」という現実が生まれます。これは経営者の努力不足の問題ではなく、地域構造そのものの問題です。
中間管理職問題は「構造の問題」である
ここまで整理してきた要素を並べると、中間管理職が機能しないという現象は、個人の能力や努力では解決できない、複数の構造的要因の積み重ねの結果であることが見えてきます。業務範囲、評価基準、組織の成熟度、評価文化のギャップ、キャリア形成、地域の制約——これらはどれも個人の責任で改善できる範囲を超えています。
この視点を持つと、解決の方向性が変わります。「より優れた管理職を採用すれば解決する」のではなく、「管理職が機能する構造を先に整える」という発想になります。同じ人物でも、構造が整った組織では機能し、構造が欠けた組織では機能しないことを前提に置くと、議論の中心は「人選び」から「構造設計」に移ります。
構造設計とは、役割の言語化、評価基準の明文化、判断権限の整理、情報共有の経路設計、報酬制度の設計、キャリアパスの提示——こうした要素を、事業計画と同じレベルで意思決定の対象として扱うことです。これは派手な作業ではなく、目に見える短期成果も得られない領域ですが、長期的に組織が機能し続けるかどうかを決めます。
そして、構造設計を経営者一人で完結させることには限界があります。だからこそ、構造を意思決定として記録し、振り返り、更新できる仕組みが必要になります。中間管理職問題の本質は、特定の人材を見つけることではなく、組織の構造そのものを意思決定の対象として扱う姿勢を持てるかどうかにあります。
ではどう考えるべきか
役割と期待値を明確にする
採用前に、その管理職にどの業務を任せ、どの成果を期待し、どの判断をどこまで任せるかを言語化します。「マネジメントを担ってほしい」という抽象的な期待ではなく、業務の重み付け、優先順位、評価基準の例、避けてほしい行動——これらを文書として整えてから、採用を始めます。
言語化のプロセスは、応募者への説明のためだけではありません。経営者自身が「自分は何を求めているのか」を整理する作業でもあります。書き出してみると、実は管理職ではなく実務責任者で十分だった、複数人で分担すべき内容だった、社内人材で対応可能だった——といった発見が得られることもあります。役割設計を含む採用判断の基本は「採用計画とは何か?」でも整理しています。
スケールに合わせて組織を設計する
組織の人数フェーズによって、必要な管理職像は異なります。10人規模では「実務もこなしながらメンバーを支える人」が必要で、30人規模では「複数のチームを横断的にマネジメントできる人」が必要で、50人規模では「組織設計や評価制度を作れる人」が必要になります。同じ「管理職」という言葉でも、求められる能力と振る舞いは規模によって変わります。
この変化を踏まえずに、「将来50人規模になったときに必要な管理職」を10人規模で採用すると、業務量や責任のバランスが合わず、双方が消耗します。今のフェーズに合った役割を採用し、フェーズの移行に合わせて役割を再設計するという継続性が、中間管理職を機能させる前提になります。
採用の優先順位を見直す
中間管理職の採用が難しいのであれば、その採用を必須とせず、別の選択肢を組み合わせて構造を作る発想も有効です。コアメンバーへの権限委譲、業務委託やフラクショナルCxOの活用、外部アドバイザーによるレビュー、業務プロセスの自動化や再設計——これらは管理職を採用する代替手段として機能することがあります。資金調達後に焦って採用を急拡大するパターンの落とし穴については「資金調達後の大量採用はなぜ失敗しやすいのか?」でも整理しています。採用以外の選択肢を持っておくことが、結果として採用判断の質も上げます。
KicStoneが支援できること
KicStoneは、採用代行でも、人事評価ツールでもありません。組織を運営するうえで発生する「役割・期待値・採用・実行」の意思決定を、構造として整理するための道具として設計されています。
組織の意思決定を構造化する
どのフェーズでどの管理職を必要とするか、その役割にどのような期待を持つか、採用後の評価をどう設計するか——これらの判断を、単発の決定ではなく連続した記録として蓄積します。判断の根拠と結果を並べて見られる状態を作ることで、採用と組織設計の意思決定の質を継続的に高められる基盤を提供します。
役割と期待値を可視化する
各メンバーが何を担い、どの成果を期待され、どの判断を委ねられているのか——これらを同じ画面で俯瞰できる状態を作ります。役割の重複、責任の曖昧さ、期待値のズレが組織内に蓄積していないかを構造として確認できることが、中間管理職問題を未然に防ぐ実務的な土台になります。
採用と事業構造を接続する
管理職の採用は、組織の実行力を変える行為であり、事業計画と切り離して考えるべきではありません。どの事業フェーズで、どの実行課題を解くために、どの役割を採用するのか——この接続を、採用の検討段階から構造として扱える状態を支援します。採用を独立したプロセスとしてではなく、事業計画の中に位置づける視点を持つための道具です。
KicStoneの全体像は「KicStoneとは何か?意思決定を構造化する経営プラットフォーム」で整理しています。組織と人材の議論を「人選び」ではなく「構造設計」として扱いたい経営者に、思考の足場としてお使いいただけます。
組織と人材の前提を整理してみませんか?
中間管理職が機能しない問題は、特定の個人を入れ替えれば解決する種類のものではありません。求める役割、期待する成果、現状の組織が提供できる構造、地域の人材プール、報酬条件——これらの前提を改めて整理することが、結果的に最も実務的な解決策になります。採用に動き出す前に、自社の組織が今、どのような構造を持ち、どこに不足があるのかを言語化する時間を取る価値があります。
KicStoneは、組織と人材の意思決定を、事業計画と同じフレームの上で扱うための道具として設計しています。求人や面接の前段にある「役割・期待値・構造」を整理する思考の土台として機能します。
※ 無理な営業はありません。まずは自社の組織構造と採用の前提整理から、無料でお試しいただけます。
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よくある質問(FAQ)
- Q. なぜ中間管理職は機能しなくなるのですか?
- A. 中間管理職が機能しなくなるのは、個人の能力の問題ではなく、期待される役割と組織が提供できる構造との間にミスマッチがあるからです。スタートアップでは業務範囲が広く、役割の境界が曖昧で、評価基準も整備されていないため、大企業で機能していた管理スタイルが通用しません。さらに、組織自体が成熟していない段階では、管理職が頼るべき仕組みも標準化されておらず、判断の負荷が個人に集中します。同じ人物でも、置かれる環境次第で機能するかどうかが大きく変わるため、問題は環境側の構造にあると捉えるのが正確です。
- Q. スタートアップで管理職は必要ですか?
- A. 規模と成長段階によります。10人前後までは経営者が直接マネジメントできるため、明示的な管理職を置かなくても機能します。しかし20人を超え始めると、経営者の認知の限界を超え、現場の意思決定や情報共有を担う役割が必要になります。重要なのは、肩書きとしての管理職を作ることではなく、どの判断・どの調整・どの責任を誰が担うかを構造として定義することです。役割を明確にしないまま「マネージャー」という肩書きだけを与えても、機能する保証はありません。
- Q. 管理職がうまくいかない原因は何ですか?
- A. 原因は複合的ですが、共通する構造として、業務範囲の広さ、評価基準の曖昧さ、組織の未成熟、経営者の期待過多、キャリア面の不安定さなどがあります。スタートアップでは、管理業務に加えて実務、対外折衝、採用、文化醸成までを同時に求められることが多く、特定の専門性に集中して成果を出すことが難しい構造があります。加えて、組織自体が変化し続けるため、昨日まで正しかった判断基準が今日には合わなくなる、という不確実性の中で意思決定を続ける必要があります。これらは管理職個人の問題ではなく、環境側の構造の問題です。
- Q. 地方で優秀な人材を採用するにはどうすればいいですか?
- A. 理想的な人材を「探し出す」発想ではなく、自社が提供できる条件と環境を前提に、現実的な人材プールから採用する発想が重要です。地方では、絶対数、報酬条件、ネットワークの三つの面で都市部より制約が強く、求人媒体を増やしても応募数が伸びるとは限りません。有効なアプローチは、業務委託や外注との組み合わせで職務範囲を絞る、地域内のネットワークを通じた紹介に時間を投資する、リモート前提で採用範囲を広げる、特定の役割は外部のアドバイザーで補う——などです。理想と現実のギャップを埋める方法は採用以外にも複数あり、組み合わせて設計する視点が必要です。
まとめ:中間管理職問題は人ではなく構造の問題である
スタートアップで中間管理職が機能しないという現象は、特定の個人や経営者を責めるべき問題ではありません。業務範囲の広さ、評価基準の曖昧さ、組織の未成熟、大企業との文化ギャップ、キャリア構造、地域の制約——これらの構造的な要因が複合して作用することで、誰がその役割に就いても同じ問題が再発する経路が形成されます。
解決の出発点は、「より優秀な管理職を採用する」ではなく、「管理職が機能する構造を先に整える」という発想の転換です。役割と期待値の言語化、フェーズに合った組織設計、採用の優先順位の見直し、地域構造を踏まえた現実的な選択肢の組み合わせ——これらは派手ではありませんが、長期的に最も大きなリターンをもたらす投資です。
経営者が見落としがちなのは、組織設計やコア人材の採用が、プロダクト開発やマーケティングと同じレベルの戦略的判断であるという事実です。これらを後回しにすれば、後から発生する組織問題のコストは、最初に整備するコストの何倍にもなります。組織は事業の足場であり、足場が崩れた状態では、どれだけプロダクトが優れていても事業は前に進みません。
そして、地方都市を含めた現実の制約を踏まえると、「理想の人材を採用する」だけでは解決しない領域が広く存在します。採用以外の選択肢を組み合わせ、構造として組織を設計する姿勢が、現実の制約と理想の間を埋める唯一の方法です。中間管理職の議論を「人の議論」から「構造の議論」へ移すこと——これが、本記事が伝えたい中心のメッセージです。組織と人材の前提を冷静に観察し直す時間が、結果として最も実務的な前進を生みます。